旅の道 第三停留所

ポニョ見てきました。
感想は以下に。
多分にそしてクリティカルなネタバレを含んでいますので

ネタバレをされても作品の感動に全く支障のない方。

既に映画を見に行った方。

ネタバレをされても映画がつまらなく感じるようになっても一向に構わない方。

そもそも見に行くつもりが全く無い方。

それらの方々でお暇があるならどうぞ以下へ。

 
 
 
 
 
 
 
 

崖の上のポニョ レビュー

 まず宗介の初めのリアクションのシーンでおや?と思った。海からベトベトン或いはヘドラみたいな怪物が迫ってきているというのに宗介のリアクションは「変なの」の一言である。よほど感受性に乏しいのか或いはよほどタフなのか。街の人間のリアクションも大体は似たようなもので皆未曾有の災害変化にも動じずむしろ平然とその局面を乗り越えていく。絵本的な背景や動きものの動かし方など見るにつれて中盤辺りになってああこの話は童話的というか絵本的な視点で見ればいいのかとゆっくりわかってくる。
初めあくまで普通の世界観と思って見始めてしまっていた自分はその感覚に少し面食らった。だが慣れればどうということはない逆にその世界は綺麗に見えてくるのだ。
現実離れしたものすごいうねりの波、星の描き方、コミック的な視覚できるギザギザの電波の線、遠景のハイコントラストな記号的な船、どれもが絵本的で童話的な記号を含んでいる。ただこの点で一つ問題点を上げるとすればそういった童話的な速やかな導入が出来ていないことだろうか、ゆっくりと次第に気づかせるようにして童話世界は迫ってくるが完全にその世界に浸っている頃には作品は半ばまで来てしまっている。まあしかしこれは大した問題では無い。実際何の疑問も無くすんなりと世界観に浸れる人も多いだろうしそんなに気になる程のことでは無い。

 声優に関しては長島一茂さんの第一声(初めの台詞以外はそこまで気にならなかった)と中盤辺りで出会う船の男性の語りが少し気になった程度だがこれらは普通の作品としてまったく問題はないレベルだ。だが所ジョージさんの声は殺人的だった。演技的にもなにか違和感があった上、致命的にキャラに声が合っていない。一見してフジモトはブラックジャックとドクターキリコを足して二で割ったような風貌の男なのだがそのキャラの面白味が声によって見事に消え去っている。いかにも堅物そうで何やら曰くありげそうな人物がおっちょこちょいな行動をするそのギャップがおもしろいはずなのだが、そのギャップが登場時点の声で既にオチがついてしまっている。これはもったいない。もっと渋めの声ならばキャラが生かせた上に初めの違和感がいくらか払拭出来ただろうに…。声優に関してはこの一点のみが気にかかった。

 世界観に関してこの物語は間違いなくファンタジーのはずなのだが何故かフジモトはDNAがなんたらとか妙に科学的なことを口走る。その割にはその直後魔法を使ってポニョを眠らせたりするなど世界観に無用な混乱を招いてしまっている。デボン紀やらカンブリア記などの単語を口走ることは一向に構わないがDNAの構造配列云々の台詞は必要ない。その台詞はこの物語が科学的な作用によって不思議が進行しているという無用な混乱の元になるだけである。

 この物語の最大の致命的な点は盛り上がりの頂点がラストシーンではなく津波のシーンに負けてしまっているということだ。
しかもその最後の試練も唐突にかなり無理矢理な感じで訪れる。人魚姫のモチーフを使った試練で宗介がポニョを愛しているかどういかを問うというものなのだがその試練が初めからまるで出来レースのようであるため緊張が全く感じられない。あの状況でポニョが嫌いだという人間はまずいないだろうからこれは全く難易度の高くない試練である。恐らく惰性的にその場のノリで答えても合格することが出来る。それほどに主人公に科せられた最後の試練のハードルは低い。盛り上がりもない。お婆さんと抱き合うシーンも少し空々しく感じられるほどに…。

 ラストの試練の開始も遅い。普通試練の開始はかなり前から始まっているものなのだがこの試練の実質的な開始は宗介がトンネルに入ったときからである。つまり残り十五分程度から最後の試練が動き出すのだ。最後の試練の開始がそこまで早い必要もないのだがそれならば最後の試練は作品の中で最も盛り上がり、緊張している必要がある。魔女の宅急便では飛行船が風に飛ばされた時から実質は始まる。試練の開始がそんなに早いというわけではないが(魔法が使えなくなる時から予兆は始まっているとも言える)が最後のシーンは間違いなく最高の盛り上がりを見せている。ナウシカも紅の豚もラピュタもラストへとつながる試練の開始は早い。ところがこのポニョはそれが遅い。宗介もトンネルに入るまではリサを探すという目的で動いているわけだから試練の開始も妙に唐突だ。

 トキお婆さんの行動もラストシーンにけちを付ける結果になってしまっている。ラスト付近に見ている人間が「違うそうじゃないだろ」とモヤモヤするシーンは入れるべきではない。あのシーンは明らかに盛り上がりと最後へと向かうスピードを邪魔してしまっていた。ああいったシーンは勿論あっても問題は無いがラストシーン近くに存在するのはまずい。

 この作品には単純な起承転結の流れが無い。ポニョはかわいいし、絵の動きもゲド戦記と同じ会社が作ったとは思えない程生き生きと動き回っている。映像も背景もすばらしい。ただシナリオが一癖ある。この癖に慣れれるかどうかがこの映画の最大にして唯一の点だ。だが決して見て損は無い。不満はあるがそれはあくまで満たされた上での贅沢のようなものだ。ゲド戦記に感じる不満とは根本的に質が違う。
最後の唐突で急激な盛り上がりに堪えられるかどうかそれによってこの話の価値は全く違うものになることだろう。
 
 噂には聞いていたがラストのスタッフロールは本当に短い。ポニョの曲のワンコーラス位の長さ位しかなかったと思う。正直余韻に浸る暇も無い。校長先生の挨拶のように不要なものだと思った制作者側の配慮だろうか?子供向けだからだろうか?唐突に物語が終わり唐突に映画館の照明が明るくなる。これでは作品の印象も悪くなる。

 余談、私の入った映画館では客の入りが異常に悪かった。一割の席が埋まっていたかどうかという程度だ。公開二日目、午後三時、明日が休日の日曜日だというのにだ。客都市部ではどうかはわからないがこれは少々心配になるほどの客の入りである。
本当に大丈夫だろうか?(調べてみたところポニョの出だしは好調なようである。どうやら心配すべきは映画館の方だったようだ)

 最後に何度もいうが私はこの作品が好きである。だが手放しで賞賛できない問題を感じているのもまた事実だ。だが決して損をするような程度の低い映画ではない。子供のようにワクワクした感じ、夏の思い出に一花添えるだけの価値であることは疑いようがない。
 

以下揚げ足取り。

 海の間近に住むアクティブな少年の割には宗介は色が白い。あれではまるで引きこもりの少年のようだ。

 ポコポコ船の中に水を送り込むシーンがあるが宗介は何故か海中に頭を突っ込む際、頬に空気をためて潜っている。あれでは水を送り込むことは出来ない。空気を送り込んでしまうだけだ。細部にこだわる宮崎さんにしては致命的なミスのように思えた。水を送り込みたいのならば頬にためるのは空気ではなく水のはずだ。それともわかっていてあえてあのままにしたのだろうか?他のいかなるシーン、たとえばポニョは真水でも平気なのかとか、童話的、魔法を使った不思議のシーンは簡単に許容できてもあのシーンだけは納得が出来なかった…のである。

ポニョと宗介

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